牧山正男の研究テーマ

詳しくはこちらへお問い合わせ下さい.

専門 水田工学,農地工学
キーワード 水田,直播稲作,代かき,均平精度,棚田,技術導入,耕作者の意向
所属学会 農業土木学会,農村計画学会,土壌物理学会
ポリシー
  • 現場主義.「事件は実験室で起こっているんじゃない,現場で起こっているんだ!」.現場の様子も知らず農家の生の声も聞いたことがないお偉いさんが,デスクワークのみで農家軽視の政策を作っている現状には憤りを覚える.そんな農政を変えてやろうじゃねーかってのが牧山の研究の究極の目標.

  • 農家側の視点に立った研究.「農学は農家のためのもの」だと考えている.常に意識してのが,「農家が幸せになるための研究」をすること.

  • 座右の銘は「ラーメンは別腹」もとい「科学の進歩は常識の否定から」.うーん名言だ.
  • これまでの研究成果

    既発表論文の要旨のページ

    大学院生だった頃から「直播(ちょくはん)稲作」に関心を持って研究してきました.
    直播とは種籾を水田に直接まく栽培方法で,春先の労働時間の大幅な減少につながります.「稲作の省力・低コスト化」のための最も重要な技術のひとつといえます.しかし,発芽が安定しないために収量が低下しやすいこと,気象条件や土壌条件に左右されることなど,技術としてまだ十分に確立したものとは言えません.我が国では現在までに全国で普及の推進が図られていますが,1970年代(田植え機械が発達する前)に2万ha以上にまで増えたのをピークにその後減少を続け,今日では8000ha(全稲作水田面積の0.5%)で微増という程度しか行われていません.
    この直播稲作について,技術の導入や普及に関して耕作者の観点から検討しようというソフト面の問題と,技術開発に関して水田の立場から捉えようとするハード面の問題の両面から研究してきています.
    (写真は直播用の機械を使って直播をしている様子です.田植えと同じように畝状に生育するので,除草や追肥などの管理がしやすくなります.)

    これまでに以下の成果を学会誌等に発表してきています.

    • 直播稲作の現状を踏まえた上で,さまざまな手法について体系的に整理し,またその農業土木的な観点からの課題を提示しました.結果として直播イネの発芽・苗立ちのためには,地表排水を迅速に行い,また湛水残留箇所を残さないために,水田の均平精度が重要であるとの考察を得ました.
      論文1

    • 湛水散播での個体密度が不均一性について研究しました.特に生育の均一性の観点から適正個体密度,適正播種量について検討し,10aあたり種籾4kg程度播種するのが適正であるという結論を得ました.しかしながら密度に関する議論の前段階として,発芽・苗立ちの議論が重要であると考えられ,それが今後の課題として残りました.
      論文2

    • 我が国で直播稲作の導入が進んでいない現状について,耕作者と普及させる側との間で直播の利点,欠点に関する情報交換や,導入した際の弊害などに関するコンセンサスが形成されていない点を指摘し,耕作者側の立場に立ったソフト面の研究の必要性を提言しました.また,大区画水田ではソフト面の課題はクリアしやすいものの,均平性等のハード面の課題は依然大きい点も指摘しました.
      論文3

    • 直播稲作の意義について改めて見つめ直し,またどのような経営を行っている農家ならばその意義が十分に生かせるかについて理論的に検討しました.その結果,直播の利点は春先の育苗等の省力化を他の産業に労力配分することによって生じることから,稲作と他の作物との複合経営を行っている大規模農家にとっては導入効果は大きいが,第2種兼業農家などにとっては導入効果は大きくないことを明らかにしました.
      論文4

    • 耕作者が新技術の導入を判断するまでの過程を「発想段階」「可能性判断段階」「経済性評価段階」に分類し,直播については「収量が激減する危険性」が経済性を評価する上で大きな問題となる点を理論的に明らかにしました.またこれに事例調査結果をも照らし合わせて,農業普及センター等の指導機関の育成が急務である点を指摘しました.
      論文5

    • 湛水土壌中散播での種子の土中への埋没深に注目し,それに田面の起伏が及ぼす影響について,現地調査および実験を行った結果,代かき後の表層の硬化および湛水の抵抗が埋没深に影響することを把握しました.また,埋没深を制御するためには,均平精度の向上だけでなく,播種時の湛水深の精緻な制御も,どちらも現実的には極めて難しいレベルにまで行う必要があることを示しました.
      論文6

    これからの研究の方向性

    1.直播稲作について
    農家側の観点からの研究は上記の通りほぼ固まってきましたので,今後は技術普及論としての整理や,技術そのものの限界について検討していく予定です.

    2.代かき直後の水田表面土壌の動態について
    直播稲作における発芽について検討しているうちに,代かき直後の水田表面の土壌の状態について研究する必要があるということに行き当たりました.そこで硬度の発現過程や濁り水の流出の観点から,代かきについて再評価することを考えています.
    「代かき」とは,田植えの数日前に,水田に水をためた状態で耕すこと.土をドロドロにしてこねることによって,秋から冬にかけてできた亀裂や根穴が埋まり,水田の水持ちをよくする効果がありますが,他にも雑草防除や田面を平らにする(田面均平)の効果もあります.
    この代かきについて,再評価すべき時期が来ていると考えています.その理由のひとつが,代かき直後の水田に種籾をまく「直播」への注目.もうひとつが,環境問題への関心の高まりから,代かき直後に濁り水を流出させることに対する問題意識の高まり.
    そこで,以下の2点の研究を進めています.
    • 直播の発芽安定化の観点から,まいた種籾がもぐる深さについて検討すべく,代かき後に水田表面の土壌硬度がどのように発現していくかについて研究しています(写真はその測定風景です.(1999/08撮影)).現時点までに現地調査データから水田の均平精度が強く影響することがわかっています.
    • また濁り水流出については,実態をきちんと把握しようと考えています.将来的には濁り水流出の制御法を,水田整備技術などの観点から提示したいと考えています.

    3.棚田の保全について
    棚田保全について,水田工学の観点から検討し始めたところです.研究要旨のページへ
    詳しくはこちらのページをごらん下さい.
    (写真は千葉県鴨川市の大山千枚田です.(1999/08撮影)
    この1〜2年ほど,新聞やテレビで棚田が紹介される機会が増えました.環境保全に対する市民並びに政府やマスコミの意識の高まりがその原因だと思われます.そうした風潮の中で,棚田はその美しさや歴史的価値に注目されて「保全すべきである」という声が主流となっています.しかし,水田本来の姿である食糧生産の場という観点からいえば,棚田は条件が悪く,保全は難しいものだといわざるを得ません.
    現在,グリーンツーリズムや景勝地として,また各地で行われている棚田オーナー制度によって,地域の活性化の観点から保全政策が図られていますが,牧山は水田工学という立場から棚田保全の是非について検討しようと考えています.

    4.ジャンボタニシの被害について
    ジャンボタニシとはタニシのような巻き貝ですが,なんとげんこつサイズ(成貝で体長9cm).正式名はスクミリンゴガイ.これが大量発生し,イネを食い荒らすという被害が,九州を中心に広まりつつあります.水田工学研究者として,これに関する研究は急務であると考えています.
    ジャンボタニシは,元々は日本にいませんでした.いわゆる「外来種」とか「移入種」と呼ばれるものです(原産地はアルゼンチン).これを1980年代初めに,福岡県のとある食堂が食用目的で輸入しました.ところが味が良くないことや寄生虫の問題のために流行らず,この食堂の倒産と同時に投棄され,野生化し,1980年代末には九州中に大繁殖しました.気持ち悪いほど真っ赤な卵を用水路の壁などに産み付け,孵化後2ヶ月程度で成貝となり,年に10回程度産卵し,寿命は3〜5年という強繁殖力.また柔らかい草を好んでしかも大量に食べるため,特に発芽直後の直播イネへのダメージは深刻なものとなっています.既に四国,本州にも北上しており,千葉や茨城まで上ってきているという話もあります(茨城県北浦が北限との説がある).イネへの被害だけでなく,生態系破壊の観点からも大きな問題だといえます.
    奴らの欠点は,大きくなりすぎると土の中に潜ることができなくなり,越冬できなくなることです.しかし,それを上回る繁殖力のため,特に九州ではもはや完全駆除は無理であろうとも言われています.
    なお,このジャンボタニシを雑草処理に使おうなどという説を唱えている人もいますが,牧山は既にジャンボタニシが繁殖してしまっている地域以外では,それは絶対にするべきではないと考えています.外来種の不用意な導入は,生態系を取り返しが付かないほど破壊してしまう危険性があるから.
      似た例として,「ハブに強い」との理由からそれを駆除してくれるだろうとの期待のもと,沖縄県や鹿児島県奄美大島に放されたマングースが有名です.奄美大島にマングースが放されたのは1979年のことですが,期待したようにハブを駆除してくれず(確かにマングースはハブと闘えば勝ちますが,それイコール天敵とか主食という意味ではありません),もっと弱いウサギとかトリ,特に天然記念物に指定されているアマミノクロウサギとかルリカケスなどを食べてしまっているようです.

    牧山のページへもどる
    Last Updated 2002/05/31
    Written by M.MAKIYAMA

    当ページは嫌煙サイトです.くわえタバコでの閲覧はご遠慮下さい.